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 こうしていると、小学生の頃を思い出す。あの頃は暗闇が怖くて、眠れないとこうして縮こまった。幽霊や妖怪に食べられてしまう。本気でそう信じていた。  私は大人になった。それでも心の端は不安定で、床板はすぐにたわむ。だから身を固くして自分を守るのだ。  家の中をくらげが泳いでいる。真っ黒で刺々した闇の中を浮いている。出口はない。蓋がきっちりとしまった水槽で、開かない天井を叩いている。ぐるぐる、ぐるぐる。その上でコウモリが踊る。見下したように私達を嘲笑う。1階は超音波の海だ。現実からは逃げられない。  身体を両手で抱き、ぎゅっと搾る。余分な物が流れ出た頃、私は眠りについた。眠っている時間は最高に幸せだ。何も考えなくて良いのだから。  これから始まる最悪な日々を、想像するだけで目眩がした。
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