11月

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「あ、ありがとう、ございます」 「とんでもないです」 彼はなにを考えているんだろう。 そもそも、どうして私とポッキーゲームなんてしようと思ったんだろう。 手元のポッキーの袋に視線を落とす。全くと言っていいほどなにも思い当たらなくて。ポッキーにこんなに悩まされる日がくるなんて思ってもいなかった。 私の悩みなど気づいていないであろう彼は箱の中からもうひとつ小袋を取り出し今度はその袋の口を開けた。 その瞬間、かすかにチョコレートの香りが漂う。 「あれ、早く開けてください」 「え、あ、えっと」 袋を開けない私に気がついた彼は黒縁眼鏡の奥から私を見つめて、私の手元にあるポッキーの袋を指さしてくる。 そこで、ひとつの疑問が浮上した。 自分が開けたポッキーでいいのではないだろうかという疑問。どうしてふた袋も開ける必要があるんだろう。
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