11月

13/15
前へ
/130ページ
次へ
「あ!」 「え、」 と、彼はハッとした顔をして顔を上げる。勢いよく上げたせいで眼鏡が少し鼻の方へずれ落ちた。 それを恥ずかしそうに中指で弄りながら、ぽつりと唇から音を溢す。それは、それは、なんとも恥ずかしそうに。 「あの、今ので僕が、あなたのことを好きなことがバレてしまいましたね」 「……」 優しい声音が胸を擽る。じわじわする。どくどく鼓動が速くなる。胸が苦しい。頭がぼーとする。顔が熱い。 こんなの、ずるい。 なんだろう、こんなの直球で好きって言われるよりずっと心臓に悪い。不意打ちにもほどがある。 「あの、本当に突然変なことを言ってすみませんでした。いや、ポッキーゲームを勘違いしていたのはお恥ずかしいです。仕事に戻る準備をしましょうか」 「……」 「あ、なので、あとで本当のポッキーゲームを教えてください。知らないままでは恥ずかしいので」 フリーズする私をよそに、開けたポッキーの袋を入っていた箱に戻し始める。
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!

192人が本棚に入れています
本棚に追加