3月

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「無事に買えてよかったです。では私は地下鉄で帰るのでここで失礼しますね」 任務は無事完了した。早く帰ろう。たしか彼は地下鉄ではなかったはずだ。早くお暇しようと数メートル先にある地下鉄の入り口を指差し帰りますよアピール。 と、 「あ、ちょっと待った!」 「はい?」 突然呼び止められ踏み出そうとしていた足を止める。なんだ、忘れ物でもしたのだろうか。 彼は先ほど私が座っていた白い椅子に両手に持っていた淡いブルー色の紙袋を置いた。そして、中から何かを探している様子。 呼び止めておいて放置をされる私は、いったいどうしたらいいのだろう。このまま帰ってしまおうか。 けれどなんだか一生懸命に何かを探す彼に捕らわれた視線を逸らすことができなくて、律儀にその場に滞在してしまう。 「ごめん、嘘」 放置された挙句、なぜか突然謝罪をされる私。え、用もないのに呼び止められ、私はここでただ待たされたのでしょうか……。 早く帰ってしまえばよかった。今日は私にとっては一応特別な日で。
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