3月

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「だから、ホワイトデーのお返しを買いたいっていうのは口実で本当はお前の誕生日祝いたくて、一緒にいたくて」 「……どっきりか、なにかですか?」 「お前、ふざけるなよ」 あまりにも真剣な顔をするから、本気で言ってくれていることは分かっていた。けれどどうしたらいいのか分からなくて、いつものようにちょけたふりをしてしまう。 しかし、その私のひと言はどうやら彼の中のスイッチを押してしまったらしい。 「大体お前な、なんで毎年俺にバレンタインのチョコ渡さないんだよ」 「……すみません」 「毎年、お前のだけを、待ってるのに」 どくり、どくりと鳴る心臓が煩い。 捕らわれた視線は逃げ場をなくした。触れられた指先はもうどっちの体温なのか分からないほどに同じ熱を共有している。 逃げるなんて、不可能だ。 「お前この後予定は?」 「え、友達が誕生日会を……」 「は?」 「え?」 「行かせないから」 予定は?と聞いたのに選択肢は“ありません”しか用意されてないのですね。なんて横暴な。 とりあえず離してくれないだろうか。と手元に視線を落とす。熱すぎて、溶けてしまいそうだ。
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