4月

5/7
前へ
/130ページ
次へ
はぁ、とため息を小さく零し「だろうね」と、音にすれば驚いた表情が向かいから飛んでくる。 その顔に「はい全て白状して」と言えば彼はゆっくりと唇を開いた。 「今日は、4月の1日で、」 「うん、で?」 「……」 「……」 「4月の1日ってことは……エイプリルフールなわけで……」 「うん」 「そうだね」と、私が言えば彼はぽつりと小さく「……嘘です」と聞こえないくらいの音で言った。 彼は嘘をつくのが下手くそだ。不器用なくせに私を騙せると思っているあたり、本当に頭が弱いんだと思う。 だから、もしかしなくても彼はきっと、いや絶対気づいていない。 「そうだよ、今日はエイプリルフールだよ」 「だから、嫌いって嘘をつきました」 「うん、分かったよ。てか分かってたよ」 「え、じゃあなんであんなこと!」 必死な顔をして「なんで?」と言う彼に、あれ少し意地悪し過ぎたかなと反省。でもそろそろ気づいてほしい。
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!

191人が本棚に入れています
本棚に追加