6月

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「はぁ、」 ゆるりと重たい腰を上げて、渋々準備をした。今度からは絶対知らない番号の電話は出ないと心に決めて。 スマホと鍵、定期ケースを手にし玄関へ向かう。ブーっと再度震えたスマホを見れば“はやくきてね”の内容にまた、ため息。 電車の時間をスマホで調べ、ちょうど電車があるではないかと玄関の傘立てからオレンジ色の自分の傘を抜いて、湿気の充満する空気の中へ一歩足を踏み入れた。 私たちが同棲しているこのマンションから彼の会社までは電車でおよそ15分。そこからさらに歩いて10分ほど。 そんなに遠くはないけれど、こんな雨の日は地味に遠く感じてしまう。 そもそもどうして朝、傘を持たせなかったんだ、私は。 と、最終的に悪いのは私なのか?と、なんだかよく分からない答えにたどり着いた。 駅に着けばやはりちょうどいいタイミングで電車が到着。 ずぶ濡れになった傘を閉じて、水滴を払いながらくるくると巻いていく。 あれ? ふと、自分のオレンジ色を見てなぜか違和感。家を出るときの記憶を辿る。あれ、スマホで電車の時刻を確認してそれで……、私の勘違いだろうか。 傘を巻き終えて、違和感はすっきりはしないまま。けれどいまの私には電車に乗ることのほうが優先事項なので、小走りで電車に乗った。 電車に揺られ、何度か歩いたことのある道を土砂降りの雨の中進む。と、見えてきた彼の会社。やっと着いたと、エントランスに入れば見慣れた人物が受付前の赤い椅子に座り綺麗に足を組みながら本を読んでいた。
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