6月

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そのままつかつかと私に向かって歩いてきた彼に呆気なく捕らわれた指先。 「いや、普通一緒に取りに行くでしょ」と不気味な笑み付きで放たれな言葉。 するりと絡まった指先を引かれ間抜けにも彼の後をついて行く形となる。 「ねぇ、私部外者なのに入っていいの?」 「だって俺、関係者」 あなたは、ね。そうでしょうけれども。 彼の背中に問いかけてみるが、ばっさり答えになっていない答えで切り捨てられた。もうなにを言ったところで私は彼には敵わない。 エレベーターで上がり、人の気配がないオフィスの中でガラス扉を開く。沢山並ぶ机に出迎えられ、会社っぽいと小学生でも言える陳腐な感想を言葉にしようとして飲み込んだ。また馬鹿にされてしまう。 電気をつけた彼は自分の席へと足早で向かうので私もそれを追った。難しそうな資料が沢山置かれた机たちに触れないように気をつけて。 引き出しの中から目当ての資料を探している彼の隣でおとなしく待つ。 と、彼越しに、机に立てかけてある見覚えのあるそれが視界に入る。 ん?あれ? 私の見間違いだろうか。 と、彼の反対側にいき目の前でそれを確認した。 あれ?確か私がいまここにいる理由は、彼がこれを忘れたからだったはずでは?とひとりで冷静に自分がここにいる理由を整理してみる。 声だけで彼に尋ねた。
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