7月

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「こちらはアラスカというカクテルです。カクテルの意味は、偽りなき心」 「……」 「すみません、出すぎた真似をして。しかしただのバーテンダーの一意見として聞いてください」 「……はい」 「私には彼と貴女様がお互いに思い合っているように見えますよ」 そう言ってバーテンダーはさきほど彼と私から預かった2枚の短冊を目の前に差し出した。 なんなんだ、本当に。今日は彼との関係を終わりにする為にここに来たというのに。 「なんなんですかね……あの人は……」 「ここから先はご本人様にお確かめください」 じんわりと涙で視界が滲んだ。 黄緑色の短冊に彼の筆跡で綴られた文字。 “七夕が誕生日の僕の大切な人を僕が幸せにしたい” 赤色の短冊には私が綴った文字。 “私の大好きな人を幸せにしてください” ぽろりと溢れた涙は、次から次へと後を追うように溢れてくる。赤色のカクテルの入ったグラスを手にし、一気に飲み干した。 なにが、熱愛だ。私に愛してるなんて、一度も言ったことなんかないくせに。
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