7月

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するりと2枚の短冊は再びバーテンダーに拐われていった。 と、同じタイミングで「ごめん」と言って戻ってきた彼。涙を見せたくなくて必死に溢れた涙を指先で拭う。 俯いたまま、必死に音を集めて震えないようにぽつりと溢した。 「奥さん今日、誕生日じゃないでしょ」 「え、いきなりなに?」 私の言葉に同様した彼は焦った声音を漏らす。そしてひとつ小さなため息を溢した。 「短冊、見たな」 「……うん」 「お誕生日、おめでとう」 「……ありがとう」 彼の言葉ひとつひとつが、私の涙を連れてくる。 温かな彼の掌が不意に私の頭を撫でた。 「なんで泣いてるの?」 「……」 なんでバレてるかな。なんて思った時にはもう遅くて、優しい体温が私の涙腺をさらに崩壊させた。 優しくしないでよ。嫌いになりたいのに。
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