7月

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「離してよ」 「うん」 「ねぇ……」 「うん。離してやりたいんだけど、でもごめん」 「……」 「離したくない」 ぎゅっと、彼の背中に腕を回した。いけないと分かっているのに。彼は私のものじゃないのに。 「このまま、俺の話聞いてくれる?」 「……なに?」 お別れの準備はできている。どうせ1年に一度しか会わない関係だったのだから大丈夫。なにも変わらない。 ……さようなら。 「嫁と、別れた」 「……」 「勝手なこと言ってるって分かってる」 あれ、よく分からない。いままで何度、そんな現実を夢見て望んだか。あまりにも都合のいい幻聴に瞬きを繰り返した。
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