8月

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なにがそんなに気にくわないんだろう。 そもそもなんで花火大会なんて来たんだろう。彼は昔から人混みなんて得意じゃないはずだ。 「なに、怒ってるの?」 「……別に怒ってないだろ」 「怒ってるよ。だってここ」 掴まれていない方の人差し指で彼の眉間にトンッと触れた。 「ここに皺寄せてるときは、怒ってるときでしょ」 「……足痛いんだろ。とりあえず、そこのベンチ座ろう」 図星を突かれ、鋭い眼差しを和らげた彼は今度は優しく私の手を引く。ベンチに導かれ、フーッと腰を下ろした。 浴衣と草履での移動は本当に疲れる。 「足、大丈夫?」 「大丈夫じゃないよ。誰かさんが強引に引っ張るから鼻緒で擦れたところが悪化しちゃったじゃん」 「……ごめん」 先ほどのお返しにと、文句を言ってやれば返ってきた言葉にあれ?っと力が抜ける。 てっきり「そんなの履いてくるから悪いんだろ」とか「俺のせいじゃない」とかまた喧嘩越しで突っかかってくると思っていたのに。
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