8月

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私は中学生のころ彼のことが好きだった。 そんな中、卒業式の日彼に突然呼ばれて教室で待っていれば彼の姿はなくて、代わりにそこにいたのは彼と仲のいい友達だった。 しばらくふたりで話をしていればそこに私を呼び出した彼がやってきて。その時も彼は眉根を寄せて怪訝そうな顔をしていた。 彼の友達と好きな歌手について話が盛り上がり、やっと現れた彼に『遅いよ、話ってなに?』と、問えば『なんでもない』と、ひと言。 この時も私の心臓はどくどくとうるさくて、期待と不安で緊張していた。なのに、彼は『なんでもない』と言ったあと、なにも言うことなくひとりで帰っていってしまった。 たしか、それからだったと思う。彼とあまり話さなくなったのは。 「ねぇ、なんで逃げるの?」 「うるさい」 「うるさいじゃない!さっきなんて言ったの?」 彼の手を握り、ぐっと勢いよくこちらに引き寄せれば、思いのほかバランスを崩して目の前には彼の顔が近づく。 そのままぎゅっと手を握った。 暗くて分からなかったけれど、この距離で見る彼の顔は真っ赤で。
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