8月

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「俺は、お前のことが好きだ」 バンっと、夜空に大きな大きな花が咲く。 「ほ、ほら、楽しみにしてた花火始まったぞ」 「……うん」 バーンッと、無数の花が咲いては散って、咲いては散って。チカチカと、夜空を彩った。 おでこを離され、彼は私に背を向けて空を見上げる。 けれど、私が先ほど握った手はそのまま。 恥ずかしくなって、もう一方の手で離そうとすれば、より力を込められ未遂に終わる。 「どうせまたぶつかったり、コケたりするんだから俺の手、握ってればいいだろ」 「……なに、それ」 「てかもう、ほかの男に触られるのとか嫌だし」 楽しみだった花火なんかそっちのけで、私はただひたすら彼の後ろ姿を見つめた。じっと花火を見ている彼はこちらに振り向いたりしない。 ねぇ、いまなにを考えてるの? 好きだなんて言っておいて、なにも聞かないなんてずるいじゃないか。
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