8月

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「あ、でも、ひとつ俺に謝って」 「なにを?」 「さっきの男に、俺のこと“ただの幼馴染”って言ったこと」 「そんなこと……」 「俺にとってはそんなことじゃない。だから謝罪としてさっき俺の背中に書いたこと、口で言って」 この期に及んで意地悪だ。そんなことを言ったことさえ私は忘れていたというのに。 「ちょっと待って。花火が終わったら言うから、心の準備をさせて、ください」 「なに、照れてんの?」 「ば、馬鹿にしないでよ!」 「してないよ。照れてるの可愛いなと思って」 あぁ、もう。この人は私を殺そうとしているのだろうか。体が熱くて、心臓がうるさくて、いまにも爆発しそうだ。 そのままじっと、手を繋いだまま無言で花火をただただ、見つめる。どれくらい経ったのか分からない。けれど、気がついたら花火は終わっていて。 「足、それじゃ歩けないだろ」 「え、」 「帰るか」という言葉と共に私の鼻緒で擦れた足を指差した彼はすっと私の肩を抱き、足を持ち上げる。突然の所謂、お姫様抱っこをされた私はバタバタと彼の上で暴れた。
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