9月

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バスに乗り、電車を乗り継いで彼の家の最寄り駅で降りる。何度も通った家までの道が今日はびっくりするくらい遠く感じて。まるで私ひとりスローモーションの世界にいるみたいにゆっくりで。 焦る気持ちが、早く、早くと私の足を急かした。 ようやく着いたマンションの前。急いでエレベーターで上がり330号室のプレートの貼られた扉の前で足を止める。 深呼吸をし、焦る気持ちを落ち着かせてインターフォンを押した。 お願いだから無事でいて。 《ピンポーン》と1回鳴ったインターフォン。彼の応答はなく私は再度ボタンに手を伸ばす。 と、押す寸前でガチャリと鍵の開閉音がした。 開いた扉の向こうには上下黒のスエットに身を包んだ彼の姿。 「ねぇ、大丈夫!?私、心配で、心配で駅から走ってきて」 「え……」 けれど、私の焦った声音とはまるで違う彼の反応に一瞬時が止まる。あれ、急いで駆けつけたというのにまるでいつもと変わらない彼の姿。 熱で寝込んでいるのでは?なにか大変なことに巻き込まれているのでは?と私の考えていた最悪のシナリオを再度思い返す。
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