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その当時おーちゃんには奥さんがいて、私が里子になってからは三人で淡々とした優しい時間を過ごして来た。
そんな日々の中で私は少しずつ壊れかかった心を修復し、おーちゃんたちから貰う愛情で子どもらしく育まれて来た。
しかし私が10歳になった時、おーちゃんの奥さんは不慮の事故で亡くなってしまった。それは余りにも突然のことで私は勿論、おーちゃんは大いに哀しんだ。
そうして私たちは突然ふたりきりになってしまった。
共に悲しみを共有し、慰め合い、立ち直って行く過程を過ごしている内に私の中でおーちゃんに対するある種の想いが芽生え、育み始めていた。
それは里親であるおーちゃんに抱いてはいけない気持ちだったかも知れない。それでも私は心の奥底でその不確かな愛おしい気持ちをこっそりと育んで来た。
決しておーちゃんには悟らせないように静かに……静かに……
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