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しかし18歳になった私の元にすっかり立ち直った実の母親が現れた。
幼い私に対して起こしてしまった所業を泣いて詫びて、そして土下座をしてまで一緒に暮らしたいと懇願された。
正直私には母親に対してなんの感情も湧かなかった。
実際受けた虐待の事は全く覚えていなかった。幼かった私はその余りにも酷い仕打ちを忘れることでその時を生きて来たようだった。
だから母親に関してはなんの感情もなかったのだ。
ただ、一緒に暮らしたいといわれた時に思ったのは『おーちゃんと離れるのは嫌だ』という気持ちだった。
おーちゃんと離れるなんて考えられないと最初は母親の申し出を断った。
しかしおーちゃんから実の親が養育可能となっている場合は母親の元に帰らなければいけないという里親制度に関する話を訊かされた。それをいわれると私は母親の申し出を受け入れなければいけなかった。
私にとっては身を引き裂かれるような残酷な現実だった。
だけど嘆き悲しんだ私は気が付いた。ひょっとしてこれはおーちゃんと本当の家族になるためのチャンスなのでは──と。
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