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'私の事か。じゃあまずは、あの時代の話から始めようかな'
私は幾度となく繰り返してきた話を始めました。
'かつて無限にエネルギーを生み出し続ける機関、永久機関というものを作り出した一人の人間がいました。
その人間は試しに永久機関を人間を模した機械に組み込み、永久に活動出来る機械人形を作りました'
一字一句違えず繰り返してきた冒頭から話を展開していきます。
人々に栄華をもたらすはずであった永久機関が、後に争いの種になった事。
人々の平和と繁栄のために永久機関を作り出した人間が、戦争を招いた悪魔として糾弾され処刑されたこと。
幾万と繰り返してきた話ですが、当時を振り返ると込み上げてくるものがあります。
最も当時の私に感情なんてものは、ありませんでしたが。
'戦争が終結した後、時の権力者たちは口を揃えて言いました。
その人間が作り出した物は永久機関などではなく、永久機関などはそもそも存在していなかったのだ。我々は騙されていたのだと。
彼等は戦争の責任を一人の人間に押し付け、事実をねじ曲げ闇に葬りました。機械人形はそれを傍らで見ていました'
悪魔と呼ばれ処刑された年老いた男の孫として。
当時の私には感情なんてなかったはずなのに、その私が事の成り行きを見て「強い思い」を得ていたのは、何度考えても不思議です。
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