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それは、とても辛い作業でした。どうして私はと、強い後悔に苛まれ続けました。
いつでも私は何も感じずにただ彼の後ろをついて回っていただけで。
彼に連れられて海にいった時も、彼に手を引かれ二人で旅をした時も、空から都市を眺めた時も。
……ですが、その作業をやめる事は出来ませんでした。彼との日々の記録を拡張した脳でなぞり返して初めて感じた彼からの愛が、痛くも、とても……あたたかかったのです。
'先生、泣いてるの?'
'先生、悲しいの?'
イルカたちの声で私は現在(いま)に引き戻されました。
波の音が穏やかなリズムを刻んでいます。
私はふぅ、と心を切り替えてイルカたちと向き合いました。
'あはは、さて、どこまで話をしたんだっけかな。
そうそう、機械人形はね、青年の死と引き換えに、ついに渇望していた知識と技術を手にいれる事になります。
そして永久機関の存在の証明のために長い長い時を過ごす事になります。人間が滅んでからも、ずっと、これからも、ずっとね'
いずれは滅ぶこの星で。
私は空に浮かんだ最終戦争の爪痕を眺めて思います。
あの大きく欠けた月が落ちる日がこの星の最後の時でしょう。
それはきっとずっとまだまだ先の話になりますが……
'ふふ。なんとね、何を隠そうその機械人形というのが、実はこの私のことなのです'
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