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「じゃあ、のろけてみろよ!」
脳天の一撃から立ち直った天牙は、まだ怒り心頭の礼門にそう挑発する。ちゃっかり中指を立ててまでやるんだから、子どもと変わらない。
「のろけろと言われて出来るものじゃ」
仕方なく侑平が止めに入ろうとしたが
「そうよ!男以外からもモテたなんて信じられないわ!!」
という弥勒の腐女子発言に掻き消された。だからどうして、こうカオスに陥るのか。侑平は頭が痛い。
「それは」
「やっぱり嘘ね!」
「嘘じゃない!」
礼門はこの件に関して譲れないらしい。珍しく声を荒げて否定した。となると、侑平だって気になる。
「どういう女性だったんですか?」
これは忘れられない恋愛だなと、侑平は勝手に想像しつつ、礼門の座る場所を作った。ついでにせんべいも差し出す。
「琴の上手い人だった」
礼門はやれやれと、せんべいに手を伸ばして告白を始めた。顔が少し赤い。
「へえ。琴か。その音に釣られて出逢ったってパターンか。平安あるあるだな」
天牙は本当かと疑うような顔で言う。ありがちイコール嘘を作りやすいと思っているのだ。
「出逢ったのは、たまたまだ。陰陽頭の付き添いで、後宮に立ち入った時にな」
お、まさかの後宮と、弥勒と侑平は身を乗り出す。展開が気になってきた。
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