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「まあ、こちらの殿方が、貴方様が認めたお弟子さんですね」
そして女性が嬉しそうに笑う。
「まあな」
そう答える礼門も、何だか嬉しそうだ。
「えっ。この方は?」
侑平の目から見て、彼女は人ではない。そう、異界のモノだ。
「さっき話した琴の君であり、俺の正妻だ」
「ーーええっ!?」
全員がビックリだった。付き合いの長い天牙すら、嘘だろと固まっている。
「正妻と申しましても、過去のことですわ。今は好き勝手やってますから」
琴の君はそうからからと笑う。
「今は京都で料理屋をしているんだ」
礼門がそれに補足するように言う。
「本当にいたよ。しかも彼女じゃなくて奥さんが」
驚く侑平。固まったままの弥勒。天牙も呆れた状態だった。なるほど、全力で彼女がいると主張するわけだ。
「薬師如来なら、台所だ」
「はい」
そして礼門は何事もなかったように、琴の君にそんなことを言っている。
「あれ、礼門さんに逢いに来たんじゃ?」
「いや。俺はついでだ。薬師如来に新しいレシピを習いに来ただけだよ」
今はもう、甘さも何もない関係なのだった。
「絶対何もなかったんだわ」
そして弥勒の恨みがましい一言に、礼門はしれっとした顔をしていた。まさに、真実は闇の中。
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