だからどうだった?

5/5
前へ
/5ページ
次へ
「まあ、こちらの殿方が、貴方様が認めたお弟子さんですね」 そして女性が嬉しそうに笑う。 「まあな」 そう答える礼門も、何だか嬉しそうだ。 「えっ。この方は?」 侑平の目から見て、彼女は人ではない。そう、異界のモノだ。 「さっき話した琴の君であり、俺の正妻だ」 「ーーええっ!?」 全員がビックリだった。付き合いの長い天牙すら、嘘だろと固まっている。 「正妻と申しましても、過去のことですわ。今は好き勝手やってますから」 琴の君はそうからからと笑う。 「今は京都で料理屋をしているんだ」 礼門がそれに補足するように言う。 「本当にいたよ。しかも彼女じゃなくて奥さんが」 驚く侑平。固まったままの弥勒。天牙も呆れた状態だった。なるほど、全力で彼女がいると主張するわけだ。 「薬師如来なら、台所だ」 「はい」 そして礼門は何事もなかったように、琴の君にそんなことを言っている。 「あれ、礼門さんに逢いに来たんじゃ?」 「いや。俺はついでだ。薬師如来に新しいレシピを習いに来ただけだよ」 今はもう、甘さも何もない関係なのだった。 「絶対何もなかったんだわ」 そして弥勒の恨みがましい一言に、礼門はしれっとした顔をしていた。まさに、真実は闇の中。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加