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気がついたら、夕方になっていた。
正しくは、ドアの閉まる音で、気がついた。
「「ただいま」 」
所長である叔父の、萬屋八幡(よろずやはちまん)と助手の唯子(ゆいこ)さんが調査から戻ってきた。
「おかえり…あれ?」
「目が虚ですわよ、理玖さん」
唯子さんが目の前で手をひらひらと振っている。
「どうした、ぼぉっとして」
熱中症か?と訊きながら叔父さんは俺の額に手をあてた。
今年36歳になるというのに、年齢が掴めない風貌で、ちゃんとしていればイケメンに見えなくも無い。
「手の方が熱いよ」
「そりゃ、外から帰ってきたからなぁ」
わるいわるい。熱中症じゃなさそうだな。と唯子さんから貰った麦茶を、立ったまま飲み干し喉を潤した。
「理玖さんもどうぞ」
「ありがとう」
氷が涼やかな音を立てるとともに、水滴がグラスをつたっていく。麦茶。
何か忘れているような。
「あ!捜し人!」
俺は、依頼が入ったことを依頼内容とともにかいつまんで話した。
叔父さんと唯子さんは、ふぅと息を吐いて顔を見合わせた。
「今年は理玖のところに来たか」
「来ましたね」
「え?どういう…」
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