巡り勇者

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巡り勇者

そうして俺は魔王の脅威から世界を救い、共に戦ってきた仲間に懺悔した。 「勇者様、どうしたんですか?今更伝えたいことがあるだなんて?」 「ああ。一緒に戦ってきた仲間にだけは伝えておこうと思ってさ、俺は実は異世界から来たんだ」 「・・・どういうことですか?」 ・・・ 俺は読んでいた長ったらしいタイトルのライトノベルを閉じて、世を憂いた。 「・・・はぁ。またまたまたまた、異世界転生物ですか」 何かヒット商品が出ればそれに続くのが世の常とはいえ、ここまであからさまに同じような境遇の人間が同じように異世界へと転生され、同じようにチート能力を有し、同じように世界を救っていては流石にお腹いっぱいである。 本を本棚へと戻すと、再び掘り出し物を求めて物色を始めるが、ふと、何も書いてない本があることに気が付いた。 「なんだこれ?」 タイトルも出版社も本文もそしてあろうことか値段すら書いてない。 「印刷ミスかな?」 何も書いてない本が陳列しているのはまずいだろう、そう考え小脇に抱えて店員を探そうとすると、俺は草原に居た。 「え?なんだこれ?どうなってんの?」 慌てふためく声が草原を劈き、木霊となって帰ってくる。     
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