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「寛子、迎え火に行くよ」
少し日が傾き始めた夕方になると、お客様の脇を通り過ぎ、提灯片手に家族みんなで迎え火に行く。
「はーい! あ、提灯は私が持つ」
「はいはい、落とさないでよ?」
「落とさないよ! ひぃじいちゃん、ひぃばあちゃんいってきます!」
迎え火をしてご先祖を迎え入れ、家族みんなで賑やかなお盆を過ごす。そうしてお盆の終わりになると、またみんなでご先祖を見送る。
「寛子、送り火に行くよ」
「はーい!」
提灯を手に玄関を飛び出した。
「あれ、……母ちゃん?」
だけど、玄関先をどんなに探してもお客様がいない。
「うん、きっと帰ってったんだね。じいちゃんばあちゃん、また来年待ってるよ」
「そっか! ひぃじいちゃんひぃばあちゃん、またね!」
送り火に行く頃になると、決まってお客様はいなくなった。
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