前編

3/3
前へ
/5ページ
次へ
「寛子、迎え火に行くよ」  少し日が傾き始めた夕方になると、お客様の脇を通り過ぎ、提灯片手に家族みんなで迎え火に行く。 「はーい! あ、提灯は私が持つ」 「はいはい、落とさないでよ?」 「落とさないよ! ひぃじいちゃん、ひぃばあちゃんいってきます!」  迎え火をしてご先祖を迎え入れ、家族みんなで賑やかなお盆を過ごす。そうしてお盆の終わりになると、またみんなでご先祖を見送る。 「寛子、送り火に行くよ」 「はーい!」  提灯を手に玄関を飛び出した。 「あれ、……母ちゃん?」  だけど、玄関先をどんなに探してもお客様がいない。 「うん、きっと帰ってったんだね。じいちゃんばあちゃん、また来年待ってるよ」 「そっか! ひぃじいちゃんひぃばあちゃん、またね!」  送り火に行く頃になると、決まってお客様はいなくなった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加