後編

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後編

*** 「今日、八月十五日は『終戦記念日』です。間もなく正午より1分間の黙とうをお願いいたします」  テレビから不意に、アナウンサーの声が飛び込んだ。惰性で付けていただけで、音声など今の今まで、まるで意識の外だった。  ……あぁ、そうか。今日は八月十五日。  どうやら私は、うたた寝をしていたらしかった。お盆休みに入るまで、連日深夜までの残業続き。溜まった家事を片付けて、少し気が緩んでしまったらしかった。  私は浅い眠りの中で、懐かしい夢を見ていた。実家でみんなでご先祖を迎える、賑やかなお盆。もう何年も、そんなお盆は過ごしていない。  幼い私が「ひぃじいちゃん、ひぃばあちゃん」と呼んだお客様は、いつの頃からか見なくなった。だけど、具体的にそれがいつだったかは、覚えていない。長じると共に、私はお客様の訪れを待たなくなり、迎え火や送り火にも行かなくなった。    学生から社会人になって自立をしてからは、忙しから、疲れているから、それらを理由に、もう何年もお盆に実家に帰っていない。  ふと、壁に掛けたカレンダーに視線を巡らせた。  ……明日まで、休み。
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