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ジジジ……と蝉の鳴き声が青々とした森に響き渡る。
整備もされていない地面には養分を吸い付くし、のびのびと育ち切った草がいくつも生えている。
そんな伸び切った草を押し退けて、1人の少年が現れた。
まだ中学生かそこらの少年は、首にぶら下げたタオルで汗を拭いながら一心不乱に前へ前へと進んでいく。
どうやら少年には向かう場所があるようで、その瞳には熱い思いが灯っていた。
背の高い木がいくも並んでいて、陰が少年を覆い隠す。だが、今日はニュースで驚くほどの猛暑日と報道されていたほど。
持ってきていた水筒の水はもう空っぽで。
何度引き返そうか悩んだ程だった。
それでも少年が引き返さなかったのには理由がある。
それは────
「……あった……」
少年の眼前にあるそれは赤く塗られた木の鳥居。
もうその塗装も剥がれかけており、ボロボロだ。
どうやらそこは本来、車で来るような場所らしく、鳥居の前にはアスファルトで覆われた道路と駐車場が広がっていた。
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