足を動かす理由

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そんな場所に少年は家から歩いてきていたのだ。そう思うだけでも疲れがどっと出てきそうだった。 だが、それで終わりではない。 その鳥居を潜ると、奥には大人でもぜつぼうしそうな階段があった。 これからこの地獄のような階段を登らなければいけない。それを思うと足が震えてくる。だが、少年には登ってやるという確固たる意思があった。 一歩一歩を踏みしめながら着実に進んでいく。 「っ、はぁ……は、きつ……」 震える足を無理やり動かし、登り切った時、少年は目の前の光景に息を呑んだ。 ボロボロの鳥居とは打って変わってしっかりと丁寧に整備された神社は屋根まで輝くほど綺麗だった。 「つ、着いた……やっと……」 御参りをする前に、神社の前の鳥居を潜る前に、少年は地面に倒れ伏した。 ごろりと仰向けになると、蒼空が少年の瞳に広がった。 雲は厚く、ゆっくりと流れていく。 空を飛ぶ見たことも無い青い鳥がとても自由で羨ましく思えた。 目を瞑り、深呼吸をすると自然の香りが鼻孔を擽る。 そんな時だった。 「っ、冷た!?」 頬に冷たいものが当たった。 驚いて目を開けると、愛らしい巫女がいたずらっ子のような顔をして、少年の顔を覗き込んでいた。 「疲れたでしょ。お疲れ様」 「……ありがと」 頬に当たっていたのはペットボトルらしく、その中に入っているスポーツドリンクがチャポンと音を立てた。 そう、少年はこの巫女に会いたいが為にこの神社へ足を運んでいるのだった。
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