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 動揺しないと言えば嘘になる。  そうであればとは思ったものの、バカバカしい夢のような偶然を見せられている。  マリは頬杖をつき、健一の顔を覗き込む。  まるで、男の反応を楽しんでいる性悪な女の顔だ。 「彼ね、この顔の上にかなりいい所のお坊ちゃまみたいよ。完全無欠な優等生。在校以来の秀才。そうとう目だってたって。でも、裏の顔があるってもっぱらの評判だったわ」 「裏の顔?」 「男子校にこんな美少年がいたらどうなると思う?」  にやりと笑う。  マリはこんな笑い方をする女じゃなかった。 「本気で彼にのめりこんだ生徒は多かったらしいわ。運動部のキャプテンなんかはことごとく彼と関係していたみたいよ。彼を取り合って諍いが起きて大問題になったとか、いい男が出来て家を出たとか、退学原因の噂は色々。スダレ君が今顔を隠しているって話をしたら、”それがいいだろう”って、お兄さんは言うの」
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