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「おいマリ、その話…他のヤツラも知っているのか?」
「女子は皆知ってる。スダレ君が綺麗な顔だってことも、とうに気が付いていたわ」
「マジかよ…」
「女の目をバカにしないで。でも、どうしてあそこまで隠そうとするのかはわからない。彼はただ綺麗なだけの男じゃない。わたし達の想像を超えた、とんでもない悪魔かもしれないわよ。健ちゃん、知らなかったでしょ?」
自分が優位に立った物言いをするマリが、真正面にいる。
グロスのテカる肉厚な唇。
先週までは黒かったはずの、脱色した茶髪。
いつの間につけ始めたのか、きつい香水が鼻につく。
蕾だった花があっという間に実になってしまった。
残念とも不気味とも取れない、複雑な気持ちになってため息をついた。
健一が、何の配慮もなく女にしてしまった哀れな女だと。
「それで?」
健一の薄い反応に、マリはわずかに不愉快な顔になり、怪訝そうに笑った。
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