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「アノ子…クスクス…。転寝していて顎が手から滑ったの。一人で頭かいて、ヘンな子」
不躾に指を指す。
その仕草が気に障る。
キラキラしたラメ入りのネイルも気に入らないが、爪はきちんと短くしてある。
マリに関しての健一の評価は上がったり下がったりで一定しない。
だから付き合うまでもなく、女友達から進展はしないだろうと思った。
頭の片隅でそんなことを考えながら目を移すと、休憩室の一番隅に、地味なトレーナーを着た生徒がいる。
遠目でもヒョロっとした痩せた根暗そうな男だ。
黒縁眼鏡と、分厚い前髪で顔を覆っている。
いくら自信のない顔を隠したくても、それは有り得ないだろうって鬱陶しさだ。
「文系?」
見たことのないヤツは大抵文系だ。
「あらやだ、同じクラスの子よ。いくら地味でもそれは失礼よね」
心のこもっていない非難だったが、半月もたって、覚えのないクラスメイトがいるのかと、健一は軽くショックを受けた。
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