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 午後の選択科目にアイツはいた。  目が悪いのだろうに、一番後ろの窓際の席で身じろぎもしない。  この気配の消し方は、ある意味見事だ。  どうりで気づかなかったはずだ。  と、勝手に納得していたら、  ーー…え? もしかして寝てる?  微動だにしないので、誰も気づいていないし、そもそも存在すら知らなかったヤツ。  寝てようが、ガリガリ勉強してようが、知ったこっちゃないが、窓から差し込む春の日差しがソイツの頭を照らしていて、長めの黒髪が女のように柔らかそうだと、少しだけ見とれた。 「健ちゃん、お茶してかえらない~?」  マリがいつもの猫なで声を掛けてくる。  馴れ馴れしさを回りにアピールする彼女気取りは最近気に障る。 「わりぃ、おれ今日からバイト」 「え~? 浪人生なのにバイトするの? それって余裕?」 「仕送りだけじゃ色々足りねぇんだよ。じゃあな」 「つまんないっ」  可愛く拗ねた顔にちょっとだけそそられた。
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