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生命を感じさせない冷たい星の瞬きが、なぜか心に沁みてくる。
闇は深く、騒がしい蛙の鳴き声も静寂を深めるばかりだ。
蚊帳の中に並べられた二組の布団が照れくさく、スダレは叔父と寝るんじゃないかと、微かな邪念が湧いたのも、いたたまれない気持ちにさせた。
スダレはそっぽを向くように寝転がり、蚊帳越しの、開け放した縁側の向こうにある星空をいつまでも眺めている。
月明かりの造る薄い陰が、今にも消えてしまいそうだった。
まだ泣いているのだろうか、それともメガネを外した寝顔を見られまいと用心しているのだろうか。
焚き過ぎた蚊遣り線香の匂いと、地から湧き上がってくる熱のある空気の濃さが息苦しい。
「健一君の手は先生の手と似ているね」
ふいに聞こえた声は背中越しで、スダレの真意も思惑も見えない。
両手を投げ出して、メガネのない顔がくるりとこちらを向いたが、闇が邪魔をしてその顔も表情もわからなかった。
それを残念と思う前にホッとしている自分がいる。
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