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 夜の寂静と違い、里山の朝は鬱陶しい命に溢れている。  競い合う蝉の声。  聞きなれないニワトリの雄たけび。  地面から湧き上がる熱は、旺盛な力が漲っていて、都会での生活の方がよほどのんびりしている。  叔父が蚊遣りを焚き換えている。  線香の匂いが染み付きそうだ。 「おはよう健。エアコンに慣れた身体には、田舎の暑さが堪えるだろう?」  田舎の朝にふさわしい爽やかさで笑っている。  昔と同じ笑顔のままで。 「あちい…」 「シャワーを使っておいで」 「そうする~」
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