219人が本棚に入れています
本棚に追加
夜の寂静と違い、里山の朝は鬱陶しい命に溢れている。
競い合う蝉の声。
聞きなれないニワトリの雄たけび。
地面から湧き上がる熱は、旺盛な力が漲っていて、都会での生活の方がよほどのんびりしている。
叔父が蚊遣りを焚き換えている。
線香の匂いが染み付きそうだ。
「おはよう健。エアコンに慣れた身体には、田舎の暑さが堪えるだろう?」
田舎の朝にふさわしい爽やかさで笑っている。
昔と同じ笑顔のままで。
「あちい…」
「シャワーを使っておいで」
「そうする~」
最初のコメントを投稿しよう!