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 予備校のあるこの街は繁華街が近い所為で、あまり綺麗な街ではなかったが、若者にとっては便利な場所だ。  ファーストフード店、コンビニ、薬局から本屋、惣菜屋まであり、生活するのには不自由はしない。  筋を外れたら大きな歓楽街がある。  ピンサロ、キャバクラ、ソープなど、夜になれば眩いばかりだ。  貧乏予備校生には、縁はないが。  健一の住むボロアパートは奥まった所にあって、歓楽街を抜けるのが一番の近道だった。  途中、ポン引きや、怪しい立ちんぼもいたりしてドキドキする。  貧乏学生には、声をかけられはしないけど。  そんな街の一角にあるゲームセンターでのバイトが決まったきっかけは、ちょっとした事件からだ。  暇つぶしに遊んでいた時に、原因がよくわからない喧嘩に巻き込まれて、とりあえず店員の味方に付いたら、いつの間にかヒーロー扱いされていた…と、そんなことがあったのだ。  このあたり一体をシマにしている暴力団の沢渡組が、トラブルを嫌う組織で、いつも何人かの構成員が見回りをしている。  騒ぎを未然に防いだ健一は、大手柄だったらしい。
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