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健一は喧嘩っ早いわけじゃないけど、弱くはない。
背が高いし、ふてぶてしそうだし、どうだいバイトしないか? と店長に言われて、自分に何をやらせようってのか不安にはなったが、とりあえず、ふてぶてしく受けた。
後始末に来た見回りの構成員が、ヤクザとは思えない格好良さだったのも、ちょっと気に入った。
仕切っていたのは一見優しそうな、ストリート系がバッチリ似合っていた若い男だった。
頬にある、いかにもヤクザな傷がやけに迫力がある。
「加藤さん」と呼ばれていたその人は、黒いスーツを着た男達を引き連れたリーダーのようだ。
「え? 君が助っ人してくれたの?」
と、健一の顔を覗き込むその目に、のんびりした物言いに不似合いな鋭さがあって、さすがに背中に冷たいものが伝う。
「ありがとよ」
そう言って手を振りながらにこやかに去っていく姿が、妙に男らしくて惹き付けられた。
ヤクザなんてものは、究極の男の世界だ。
なりたいとは思わないまでも、多少なりと気になる集団ではある。
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