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 そのむさくるしいヤツはいつも、黙って部屋の隅にいる。  教室では窓際の一番後ろ。  売店では自販機脇の鉢植えの後ろ。  自習室も隅の席だ。  座敷童か?  誰とも目を合わせず俯き加減で歩き、グレーか紺の地味なトレーナーは見るからにサイズが合っていない。  ジーンズは常にストレート。  有り得ないローファーを履いている。  オマケにいつもピカピカに磨かれていたりする。  いったいどんなセンスしているのか、ダサ過ぎて目を逸らしたくなる。  ただ…、柔らかそうな髪の艶や、異様に白い肌が綺麗で、ダボダボのトレーナーから覗く指が女のように華奢だった。  顔半分を隠しても、隠しようのない唇は、良く見ると人形のように整っている。  相変わらず石川に金を巻き上げられていたが、特別おどおどしている様子はない。
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