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「なあマリ。あいつなんて名前?」 「なぁに健ちゃん、どの子? ああスダレ君?」 「スダレ?!」 「だってほら、前髪がスダレみたいで邪魔臭いじゃない? 女子は皆スダレ君って呼んでるよ」 「かえって悪目立ちしてるってわけ?」 「そうかも~。あんな気持ちの悪い子見たことないもん」 「ひでぇ言われよう。で、本名何?」 「さぁ? 石川君なら知ってるんじゃない? 仲良しだしぃ」  女は残酷だと改めて思う。  対象外の人間は、徹底してからかいのエサとしか見ないのだ。  そこに女特有の優越感を見た健一はうんざりし、同時に「スダレ君」に多少の興味を持った。  ああいうヤツっていったい何を考えて生きてるんだろう?  目立たないように生きる意味って何だろう?  どうやって女にモテるか、楽しく過ごすかと、しょうもない浪人生活でも、何事にも深刻にならず、軽く生きたい健一には未知の生き物のように思えた。
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