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 入校の予備試験で、健一は上位クラスに振り分けられた。  国立理系、医学部、法学部狙いのこのクラスはいくつかの人種に分かれている。  親の期待を背負って何が何でも次の失敗が許されない者。  当然受かるべきところを不足の事態で失敗したか、受験できなかった者。  何となく未来が見えなくて、迷いながらもとりあえず国立を目指す者。  重なる部分の多い健一は、生まれ持った軽いいい加減さが、いつも良い方へ解釈され、半月も経つ頃には仲の良いグループを作り、そこそこに楽しい学生生活を満喫できるまでにクラスに馴染んだ。  わき目も振らず勉強するわけでもないし、女遊びが興じた受験失敗談は、自虐ネタとしてウケは良い。  がむしゃらに生きようと思わない気楽さで、健一はすっかり軽い男と思われているらしい。  いや、間違いではないが。
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