忘れ物

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 学校までの道程は徒歩で二十分ほどかかる。暗闇に包まれ、日中とは雰囲気が違う通学路を風のように疾走していく。  点滅する赤信号、暗闇に光る小動物の瞳。街灯は頼りになくその足元を照らし、冷ややかな月の光が丘の上にある校舎に影をつけている。  最速ラップを叩き出した僕は、体育館裏の歩道に自転車を乗り捨てると、高いフェンスに手をかけた。学校の敷地周辺をぐるっと確認してみたところ、正門も裏門もきっちり施錠されており、先生たちも残ってはいないようだった。  警備室には、それぞれ二人の警備員が常駐しており、正面突破は不可能だ。そこで、体育館の裏側から構内への侵入を試みることにしたのだ。  噂に聞いていた通り、門を通らず、教師たちにばれないように構内を出入りする必要がある一部の生徒たちからは御馴染みの裏口通路となっているようで、金網のフェンスには登りやすい様に幾つもの跡ができていた。  まさか自分が利用することになるなんて、と思いながら無事にフェンスを乗り越えた僕は、体育館の陰に隠れ、乱れた呼吸を整えながら辺りの様子を窺った。     
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