忘れ物

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 薄明りの中、足元を見ると、真新しい足跡が複数できている。その乱れた地面に、放課後に聞こえてきた会話が思い出された。 「今日の夜みんな暇?」 「なんで?」 「夏休みが始まった記念にさ、肝試ししようぜ」 「おお、良いね!」 「どこでやる?」  悪い意味で目立っているグループが、いつものように教室の中央を陣取っていた。その、青春していることを周りに誇示しているような言動は、見ていて痛々しいし鬱陶しいが、口にしたら負けだ。  彼らは周囲からの冷ややかな視線に気づくことなく、夏休みの予定を話し、下品な笑い声を溢している。会話の内容は、耳障りな大声で話をしている所為で、否応にも聞こえてきた。 「近くにお墓とか廃墟ってないよね?」 「心霊スポット知ってるけどさ、移動が面倒だしなー」 「となれば、やっぱ夜の学校じゃね?」 「いいねー、侵入しようぜ!」 「でも、警備員がいるよね?」 「大丈夫、見つかっても逃げればいいって」 「そうそう。捕まったり、顔バレしたりしなきゃ大丈夫だって」  彼らはどんな情報網から手に入れたのか、警備員の巡回ルートや時間を知っており、警備が手薄になる深夜の1時頃から学校に侵入すると話していた。     
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