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その人物に思い当たりがあり過ぎた僕は、思わずドアを開けそうになった。
「ねえ、今何か聞こえなかった?」
「えっ?」
互いに緊張が走る。このまま逃げるべきか、それとも脅かして彼らを追い払うべきか。高速思考をしながら、彼らの反応を待った。
「ちょっとやめてよ」
「ほんとだって! 隣の教室からしたよね?」
「おう、俺も聞こえた」
「嘘でしょ? 怖いんだけど・・・・・・」
「やばいやばい」
「どうしよう。手紙の霊だったりして」
「おい、やめろっって」
「ビビってのかよ」
「ビビってねーよ」
「じゃー、見てきてよ」
「はあー?」
どうやら確認しに来そうな雰囲気だ。教室を振り返った僕は、急いで隠れそうな場所を探した。教卓の後ろや掃除道具入れの中が候補となるが、万が一バレてしまった時が面倒だ。
誰が見に行くかと口論している間に、素早く窓際の席まで移動した僕は、ベランダに続くドアの鍵をゆっくりと開けた。
「ほら、また音がした!」
「ねえ、ちょっと見てきてよ!」
「ったくしょうがねーな」
「何かいたら、逆に捕まえてやるよ」
少しずつ足音が大きくなってくる。ドアを開けてベランダに出た僕が、ちょうどドアを閉めたタイミングで彼らが教室の前にやってきた。
「何かいる?」
「いや。ぱっと見何もないけど」
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