「ごめんね」

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そう言われて先にご飯を済ませ、お風呂にも入り寝る準備は完璧。さすがにもみじくんが帰ってくるまで起きて待っていようとリビングで紅茶を飲みながら雑誌を開いて時間をつぶした。 日付が変わる10分ほど前。ガチャリと鍵の音が聞こえ帰ってきたと、玄関まで出迎えれば眉根を寄せてなんとも怪訝そうな顔をするもみじくん。 「おかえりなさい」 「……ただいま。あんず、起きてたんだ」 「……うん」 あれ、なんだか様子がおかしい。まるで起きていたら都合が悪いみたいなもみじくんの反応にもやもやがひとつ生まれる。 「ご飯は後にして、お風呂先に入ってきます」 そう言うと足早に私の横を通り過ぎていく。 それを追うようにふわり、いつもとは違う香りが一瞬、私の横を通り過ぎた。 「……もみじ、くん」 「なに?あとにしてもらってもいいですか」 もみじくんの香りではないそれは、甘いローズのような香りで。有名ブランドの女性物の香水の香りに酷く似ていた。 「もみじくん」 「あんずごめん、あとにしてって言ったよね」 冷たい態度と、ローズの香りが私の思考を嫌な方へ、嫌な方へ誘う。
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