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と、
「え、もみじ、くん?」
そこには大きなソファに身を預けスヤスヤ眠っているもみじくんの姿。
どうしてこんなところで寝ているんだろ。スーツを着たまま寝ているもみじくん。
「もみじくん」
「……」
「もみじくん!」
このままでは風邪をひいてしまうと、気持ちよく眠っているところ申し訳ないが小さく彼の体を揺する。
その拍子にもみじくんの手に握られていたスマホがゴトッと無機質な音を立てて落ちた。
「ん、……あんず?」
「あ、え、もみじ…くん」
「おかえり」
「……ただいま、です」
おかえりと言ってゆるりと笑ったその顔はまだ眠たさを含んでいて。
「ごめん、寝ちゃってた」
「んーん、私が先に寝てって言ったから」
んー、と両腕を上げながら体を伸ばすもみじくん。けれど私はもみじくんの手から落ちたスマホを拾い上げ、その画面に釘付けになってしまった。
「あんず、遅くまでお疲れ様」
「……どうして?」
ちらりと視線をダイニングテーブルへと向ければ用意されている、ふたり分の晩御飯。
「どうして、ごはん」
「どうしてって、僕あんずにLINE送りましたよね?」
そう言うもみじくんにさっき落とした彼自身のスマホの画面を見せる。
「あ、送信し忘れてた」
「待たせてしまってごめんなさい」
「いいんですよ、僕が待ちたかったので。ひとりで食べるより、ひとりで寝るより、やっぱり」
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