「悪戯したいので」

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突然拒否を示す文面が送られてきた。 え、もはや別人が送ってきたのではないか?というくらいに一瞬の変わり身で。 なんだなんだと思うけれど、仕方がない。と、そのまま直行で家に向かう。いらないのならばあんなことを言わなければいいじゃないか。と思うのは私だけだろうか。 帰ったら絶対にトリックオアトリートを言い返してやる。そして悪戯をしてやる。くすぐりの刑でお腹をよじらせて苦しめばいいのだ。なんて、しょうもない作戦を立てた。 家に着き扉を開ければ、ソファに体を預けて「おかえり」と迎えてくれるもみじくん。 「ただいまです」 「どこにも寄って来なかったですか?」 「はい」 楽しそうに笑うもみじくんをじっと見つめ。よし、これからくすぐりの刑に処する!と勢いよく唇を開いた。 「もみじくん!トリックオアトリート!」 「え、あ、じゃあ、はいこれ」 あれ?けれど私の盛大のトリックオアトリートも虚しく、するりともみじくんは私にポッキーの箱を差し出してくる。 「ポッキー……」 「うん。あんずがトリックオアトリートって言ったからお菓子あげようと思って買ってきました」 この人はいったいなんなんだ?という視線を向ければ口角を上げてくすりと微笑むもみじくん。 「あんず、トリックオアトリート」 その言葉に私はぎょっとした。 「え、もみじくんがなにも買ってくるなって言ったので」 「うん」 「なにも持って、ないのですが」 「うん」 「……え?」 なんだか妙に嬉しそうなもみじくんの表情が怖い。 「トリックオアトリート」 「……あの」 「お菓子がないなら仕方がないですね」 その言葉に、私は悟った。あぁ、この人にハメられたのだと。 本当に狡い人だ。 image=511753917.jpg
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