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どうやら、眠り王子がお目覚めのようだ。
「もしもし、おはようもみじくん」
《おはよう、ごめん出ていくの気がつきませんでした》
「全然大丈夫ですよ。もみじくん疲れてるからゆっくり休んでください」
《ありがとう。あと朝ごはんもありがとう》
「いいえ、とんでもないです」
まだ眠たさを含んだもみじくんの声音が耳元で優しく言葉を溢すからなんだかくすぐったいけれど、心地よくて落ち着く。
〈1番線に列車が参ります〉
けれど、それをかき消すように大きな案内の放送が入った。
《もう電車くるね》
「はい」
《気をつけて行ってらっしゃい》
「ありがとうございます。行ってきます」
「じゃあ」と言って電話を切ろうとすれば「あ、待って」というもみじくんの声に捕まり、再びスマホを耳元へ戻す。
「……どうしました?」
《手紙もありがとう》
「いいえ」
《朝、会えなかったから、》
「……」
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