「もっと妬いてよ」

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ローテーブルの上で震えたもみじくんのスマホを見つめてしばらく停止した。 見たかったわけじゃない。見ようと思ったわけでもない。でも、送られてきた名前とメッセージに思わず視線が文字を追ってしまった。 “サクラ”って、誰でしょうか……。 と、なんとも絶妙なタイミングでシャワーを浴びにいっていたもみじくんが濡れた髪を拭きながら戻ってきた。 ばっと、読んでいた雑誌をローテーブルに広げて、なにも知らないですよ。という雰囲気を作り出す。 聞きたいけれど、聞くのは怖い。 「あんず、どうしたの?」 「っえ!?な、なにがでしょうか?」 「んー、なんか、へん」 もみじくんのその言葉に、どきどきと速くなる心臓。なんで、なにも言ってないのに、バレてるの……。 髪を拭きながら、ふわりと私の隣に座りシャンプーのいい香りをさせてくるもみじくん。イケメン度3割増しですね。なんて思いながら、サクラって誰ですか?と、音には出来ずに飲み込んだ。 「どうしたの、元気ないですね?」 「え、ううん。なんでもないよ」 なんでもない……。 ねぇ、もみじくん。 昨日は、サクラさんに会ってたの?サクラさんとなにをしていたの?また会うの? 聞きたいことはたくさんあるのに、ひと言も音にすることはできなくて。 パタリと、静かに雑誌を閉じた。 と、もみじくんが自分のスマホへ手を伸ばす。画面をみて「あ、サクラからだ」と小さく呟いた。 その声に、思わずびくりと体を震わせてしまった。 「あんず?」 「……はい」 「もしかして、元気ない原因ってこれ?」 「……」 「あんず」 「……はい。すみません、勝手に見てしまいました」 さきほどの画面を再度見せられ、どうせ違うと言っても上手く嘘を突き通すことなどできない私に逃げ場はもうない。 すみませんと、正直に白状した。
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