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『お時間ある時にでも連絡ください。美味しいものでも食べに行きましょう』
『すみません、ありがとうございます』
『あ、あの迷惑でなければお名前お伺いしてもよろしいでしょうか?』
『あ、すみません。私、美森 杏と申します』
『瀧 紅葉と申します。美森さんこの度は大変失礼致しました。ではまた今度近いうちに』
『はい』
これがもみじくんとの出会いだった。
けれど私はもみじくんに連絡をしなかった。
コーヒーを溢されたことには怒っていないし。そんなことでご飯をご馳走になるなんておこがまし過ぎる。
第一、なんて連絡をしたらいいのか分からない。
私は彼に連絡先を教えてなどいなかったから向こうから連絡が来ることもなく。
でも毎日、駅に着くとちらちらと周りを確認して。もしかしたら彼がいるのではないかと探している自分がいた。
そんなある日、偶然にも帰りの駅のホームで彼を見つけて。
じっと目で追っていれば、彼の瞳がこちらに向く。
どきりと、心臓がうるさく鳴って、まるで私の心臓は彼のことを好きだと言っているみたいだ。
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