「もう一度聞かせて」

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画面を見ればタイミングの悪いことに楓くんからで。 別にやましいことなんかなにひとつない。多分仕事の話だと思う。けれど、もみじくんの前で出るのはなんとなく気が引ける。 「もみじくん、私ちょっと電話してきます」 「なんで、ここでしたらいいよ」 「いや、でも仕事の話だから」 と、ソファに沈んだ体を持ち上げようとすれば、虚しくも私の腰はもみじくんに捕まり再びソファに体を沈めた。 彼の力に私が敵うはずもなく。 仕方なく後ろからもみじくんに抱きしめられた状態のまま通話ボタンを押す。 「はい、瀧です」 《あ、瀧さんすみませんお休みのところ》 「どうしたんですか?」 《この前お願いしていた会議の資料って僕貰いましたっけ?》 その言葉にハッとして盛大にため息を溢す。 「……すみません、渡すの忘れてました」 《あぁ、よかったです。てっきり僕が無くしてしまったのかと思って焦りました》 「本当にすみません」 《あの、資料って今もらえたりしますか?》 「え、いまですか……」 “いま”という言葉に反応したお腹に回ったもみじくんの腕にぎゅっと力がこもったのが分かった。
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